京都産業大学同窓会

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学部別

ラテンの血

(※2017年9月発行の同窓会報の内容を転載しています)
井㞍 香代子 教授
文化学部 スペイン語圏文学
2013年度 卒業アルバム・ゼミ写真より
~アルゼンチン一部リーグ・クラブチーム応援バージョン~

 卒業生のみなさん、いかがお過ごしですか。私が本学に奉職したのは1991年4月ですから、今年で27年目になります。最初の10年間は教養部と外国語教育研究センターに所属して、共通教育のスペイン語科目を担当しました。第2外国語としてのスペイン語は、ありがたいことに当時も今も人気が高く、初級クラスのほとんどは第1希望で選んでくれた学生さんです。志望理由は、サッカー、音楽、フラメンコ、そしてお祭りと、陽気で情熱的なスペイン語圏の文化に集中しています。
 そんな初級クラスのひとつで出会ったのが、経済学部の仲良し4人組、H君、M君、N君、T君でした。在学中の4年間、スペイン語も初級だけでなく中級、上級とステップアップしてスペインやラテンアメリカの文化も熱心に学びました。折に触れて研究室にも遊びにきては学生生活、サッカー、就活までいろんな話を聞かせてくれ、時には相談にも乗ったものです。H君はとうとう卒業研究を「スペイン経済」で書き上げました。
 卒業後も時折連絡があり、転職で気をもんだりもしましたが、とりわけM君は数年で世界一周の費用を貯めたと宣言して離職し、2年間バックパッカーをしながらまさに世界中からメールと絵はがきを届けてくれました。帰国後は私の授業に役立てられるようにと、中南米のマヤやインカの遺跡の写真データを沢山プレゼントしてくれました。ちなみに彼はその後、無事再就職して幸せな家庭生活を営んでいます。そして昨年、彼らの久しぶりの大学訪問のあと飲むことになり、夜が更けるまで懐かしく語り合いました。お互いにいろんな変化があったとはいえ、陽気で情熱的な血は変わらず脈打っていることを確認し、再会を約束しました。今年の日程も、もう決まっています。
 さて、私は2000年から文化学部に移り、現在は主にラテンアメリカの文化やスペイン語圏文学を担当しています。私のゼミには、やはりスポーツ、ラテンミュージック、ダンス、お祭り、中南米文明などに熱い情熱を抱く学生さんたちが集まってきます。在学中からジャマイカ発祥の音楽「スカ」を愛するあまりCD輸入代理業までやっていたS君、マヤの民族衣装の染織について村単位で調べ上げ、先住民文化の現状をあぶり出したSさん、ダンスサークルに力を入れ過ぎて4年次春学期終了時に25単位を残していながら、文化学の面白さに目覚めて見事に卒業し、念願の旅行業で活躍しているK君など、どのゼミ生さんたちも個性豊かでラテンの情熱を持った方たちでした。遊びにきてくださった卒業生も多いですが、この気質は変わることなく人生と世界に向けられ、「常に独自の見解を堅持し自己の信念を貫き得る人間」(本学建学の精神)を支える力となっていると感じています。
 私はまだしばらくここにいて、ラテンの血をつないでおりますので、どうぞ遊びにきてください。お待ちしております。