京都産業大学同窓会

恩師随想

最近の恩師随想
恩師随想
学部別

情報系分野のAO入試の価値と社会を変えていく卒業生達

(※2023年9月発行の同窓会報の内容を転載しています)
平井 重行 教授
情報理工学部教授 ヒューマンコンピュータインタラクション、 音楽情報処理

 自分は元々企業で仕事していたところ、縁あって2003年4月から京都産業大学の教員となり、20年が経ちました。現在は情報理工学部の教員ですが、情報分野との関わりについては、1980年頃(小学生時代)からプログラミングを始め、40年以上に渡って情報技術の進化と共に歩み続けてきた経歴があります。その点で、真のデジタルネイティブ世代だと自負しています。子供の頃から自分が面白い・興味があると思えることにひたすら積極的に取り組んできた流れの中で、その取り組みが可能な職の1つとして大学教員をしています。もちろん、自身の経験を活かして若い世代を育てたいという思いもあっての20年です。この間、いろいろな学生と出会い、卒業生を見送ってきました。そして、今も学部生、大学院生の研究指導をし、国内外の学会や、専門分野に関連するイベントへの研究成果の展示・公開などを相変わらず精力的に行っています。

 さて、現在は「総合型選抜入試」と名称が変わった「AO入試」の話を少し。本学着任当時の所属は理学部コンピュータ科学科(同年に計算機科学科から名称変更したばかり)でした。そこでは、プログラムや電子工作の作品を審査するAO入試が行われていて、専門性も意欲も高い尖った学生が毎年何人も入学していました。少なくとも関西で一番始めに作品系AO入試を始めた学科だと聞いています。2008年のコンピュータ理工学部設置、2018年の情報理工学部設置と、情報系学部学科再編が2度(両方とも自分が大きく関与)あってカリキュラムが変わってきたほか、社会ではスマートフォンの登場やインターネット技術の発展に伴い、社会・経済状況もずいぶん様変わりしました。それら変化に伴い、多くの学生の興味や趣向も徐々に変化していますが、AOで尖った人材が入学してくる様や、AO学生といろいろ話す機会が多いことなどは着任当時から基本的に変わりません。卒業後も活躍する人も多く、SNS等で繋がっていて連絡を取ることもよくあります。世の中ではAO入試はいろいろ揶揄されてきましたが、情報分野は専門的能力が個人に宿る傾向が強く、その能力が際立って表に出る分野でもあるため、AOの本来の主旨と合致し、他分野に比べヒット率が高く、実績のある入試と言えます。AO入学の現役生および卒業生のために、世間のAO入試への印象をなんとか払拭したいところです。


 次に、自分の研究室の学生や卒業生について書きます。研究室としては人気があるわけではないですが、成績や実力に関わらず面白い学生が多く配属希望してくれていると思っています。留年生も来ますし、留年しても大学院進学するケースも多く見られ、所属学部の中では比較的進学率高めかつ多様な進学実績があります。授業や研究以外のことにも専門性を発揮して面白いことを勝手に試す学生もいて、加えて研究成果もしっかりと出し、充実した学生生活を送った(ように見える?)人、実際に目立つ仕事をしている人も多くいます。関東や関西でOB/OG会と称した宴会も時々行っており、指導した技術分野や考え方を社会で実践・実装している姿や話を聞くのは誇らしい限りです。また、転職だけでなく、起業やフリーランスエンジニアとして活躍している人も何人もおり、働き方でも先端を突き進む人も多いのは素晴らしいとさえ思います。今後もAIやIoT、ロボット技術などのテクノロジーが世の中をどんどん塗り替えていくことは間違いありません。新しいこと、面白いことに積極的に取り組み、世の中を率先しつつ社会を変えていくand/or影響を与える人材を引き続き育て、輩出していきたいと思っています。もちろん、自身も社会的に価値ある研究かつ面白いものを作って関わり続けていきたい所存です。