京都産業大学同窓会

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私の「導きの星」

(※2023年9月発行の同窓会報の内容を転載しています)
クツェレヴァ・アンナ 教授
外国語学部教授 ロシア語教育

 いにしえの時代から船乗りは星座を頼りに目的地を目指しました。このことはさまざまの国の文化の中に浸透し、いつしか「導きの星」という考えが人々の間で定着しました。この星は、私たちを取り巻くすべてのものと調和して生き、幸せだと感じるためにたどるべき道を照らします。この考えに立つと人生は不思議に満ちています。

 今からおよそ30年前に私はフランスのパリを離れ、京都産業大学で教鞭をとるようになりました。今思えば、いくつかの偶然が運命的に重なって本学に導かれました。緑に溢れたキャンパスに初めて足を踏み入れた時、自然の懐に抱かれた温かみを強く感じました。また、貴重な書籍やさまざまな言語の雑誌や新聞が豊富に揃った近代的な図書館には、快適な環境と個人およびグループ学習のための特別な部屋があり、磁石のように学生たちが集まる光景に心打たれました。

 日本の大学のシステムはヨーロッパの大学とすべての点で異なっています。そのため、当初、私はあらゆる場面で戸惑いましたが、教職員の皆さんに助けられて職場でのコミュニケーションにも慣れることが出来ました。京都産業大学の教職員の皆さんは親切で忍耐強い人たちばかりです。本学で人の絆の大切さを実感しました。私は日本文化を敬い、日本の人々を尊敬しています。

 本学の学生は冒険心に富み、自らロシア文化を吸収しようとする熱意があります。授業以外でも神山祭やその他のイベントを通して私は学生たちと交流を深めました。私が学生たちにロシア語を教える中で気づいたことは、ヨーロッパの学生と異なり、日本の学生は文字に頼って外国語を学ぼうとする傾向があることです。日本が象形文字(漢字、ひらがな、カタカナ)を通して世界を認識する文化であることに影響されていると思います。そこで、私は、普段の生活に直結した沢山の写真や図表を学生に見せ、文字に頼らずシチュエーションからロシア語を学べるようにしました。この私の試みは本学の学生のロシア語力を向上させました。

 私のロシア語教授法は2010年にロシア連邦を代表する出版社Zlatoustから世に出した教科書「Spasibo!」(ありがとう!)にまとめました。この教科書(オールカラー、200頁)は52ヶ国で販売され、世界中のロシア語教育現場から注目されました。さらに、京都産業大学のロシア語教育をもとにして、Zlatoustと並んでロシア連邦を代表する出版社Russkij Jazykから「Vstrech: vesna, leto, osen’, zima」(出会い:春夏秋冬)(2014年)と「Slovo za slovom」(一語ずつ)(2015年)、そして、Zlatoustから「Fun Russian」(楽しいロシア語)(2018年)を立て続けに出版し、これらも50ヶ国以上で販売され、京都産業大学で行っているロシア語教授法が世界中で実践されるようになりました。

私の教科書とロシアの民芸品

 私の「導きの星」はサギタリウスです。サギタリウスは私の人生の大半を照らし続け、学生、同僚、教職員の皆さんと共に創造的な仕事に従事する喜びを私に与えてくれました。Spasibo bol’shoe!(ほんとうにありがとう!)心から感謝します。