永年の損害保険会社勤務の後、自身の「セカンドライフ」に挑むべく、2013年に大学教員に転身し、2015年より本学でお世話になっています。
本学法学部のゼミは2年次生より始まりますが、1教員は2クラスしか担当しないので、現在の法学部では教員によるゼミの持ち方が3種類あります。小生は、2年次生単独クラスと、3・4年次生合同クラスとしています。
2年次演習では、学生は、(公益財団法人)コンソーシアム京都が主催する「京都から発信する政策研究交流大会」への出場および入賞を目指しています。学生自らが社会問題を発見し、その実状を自分の足と耳で調査し、様々な解決策を考案のうえ検討し、一つの解決策に絞り込み、論文にまとめあげたうえで、他人の前で発表することになります。この一連の過程の中で、学生自身がひとりでに成長していく姿を間近で見ることができるのは教師冥利に尽きます。
ちなみに、学生が取りあげたテーマには、たとえば次のようなものがあります。「木屋町通り(京都の繁華街)の煙草のポイ捨ては、道頓堀川沿いの通り(大阪の繁華街)よりも多いのではないか」、「ブルーライトの街灯が一時流行したが、どうなったのか」、「優先座席のトラブルを解決するにはどうしたらよいか」。学生の問題関心は、なんと多彩なことでしょうか。
3・4年次演習では、学生は、2年間をかけて保険法に関する法律論文を作成するとともに、当該論文を(公益財団法人)みずほ学術振興財団が主催する懸賞論文に応募して入賞することを目指しています。本学法学部には、今のところ卒業論文の制度が存在しませんが、学生自身が法的な問題を発見し、背景事情を調査しつつ、判例や学術文献を渉猟のうえ、自分なりに考えをまとめ、文章に仕上げていく一連の作業によって、計画性、忍耐力、論理的思考、文章表現力等々が自ずと培われていきます。
このように、小生のゼミではハイレベルな挑戦をしてもらっていますが、一連の過程を経ることだけでも、学生は十二分に成長します。
結果だけに着目すると、うまくいくこともあります(政策研究交流大会に出場することができ、かつ、質問賞を受賞したことがあります。また、懸賞論文に見事、入賞したこともあります)。けれども、ハイレベルな挑戦であるが故に、残念な結果に終わることも、ままあります。その時には、入賞している他大学の学生も同じ大学生であるので、その発表の様子や論文を観察したり吟味したりすることを勧めています。そこで、「私は到底かなわない。」と思うのか、「彼(彼女)と私との差は僅かだ。」と思うかで、これからの自分の途が分かれることになること、また、この捉え方の違いはいつでも変えることができることを、学生に伝えるように努めていますが、うまく伝わっているかどうか不安になることもあり、今日に至っています。