京都産業大学同窓会

恩師随想

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学部別

京都産業大学とともに

(※2021年9月発行の同窓会報の内容を転載しています)
村上 博巳 教授
現代社会学部教授 運動生理学・測定評価

 卒業生の皆様、お元気でお過ごしですか。
 本学に奉職して46年、初代総長荒木俊馬先生から辞令を頂き、現学長黒坂先生まで京都産業大学とともに歩んできた人間です。1975年に教養部に着任し、その後現代体育研究所、体育教育研究センター、文化学部を経て、2017年現代社会学部健康スポーツ社会学科に着任しました。その間、体育会卓球部の監督として課外活動教育にも尽力してきました。
 1967(昭和42)年、本学が創設時の体育教育のカリキュラムは、保健体育講義と体育実技の2科目で、必修科目の位置づけでした。1991(平成3)年、大学設置基準が大綱化され、大学体育の必要性、学部縦割りのカリキュラムの見直し、多様化、個性化、学際化、国際化などに対応できるよう、カリキュラムの弾力化が求められました。その結果 1998年の総合体育館の建設とも相まって、シラバスとの有機的な関連性を持った新カリキュラムに移行しました。
 全学共通教育の体育教育科目では学生の身体機能測定を行っています。本学学生の身長は1967年から2000年頃までは増加傾向、それ以後は横ばいか僅かに増加傾向が伺えます。体重は一時大きく低下しましたが、それ以後は男女とも顕著に増加、体格(BMI)は女子学生の場合、肥満傾向がやや増加していると同時に痩身傾向も増えてきており大きな問題です。身体機能では男子は筋持久力、全身持久力が全国値に比べて高く、女子では筋持久力が高い値を示しました。男女とも柔軟性は低い値です。近年、大きな問題となっている生活習慣病は若年者でも大きな問題となっており、さらに若年期における生活習慣が中高年での生活習慣病に大きく影響することが報告されています。本学学生の体力とライフスタイルの調査結果によると、運動習慣は男子学生42.4%、女子学生62.8%が体育の授業のみでした。国民健康・栄養調査報告では運動習慣者を週2回以上、1回30分以上、1年以上運動をしている者と報告しています。学生の半数以上は運動習慣がないということになります。睡眠時間では男子学生21.5%、女子学生31.1%が6時間未満でした。朝食は男子学生56.2%、女子学生67.0%が毎日食べています。学生の体力や健康度は生活習慣の乱れとともに低下する傾向が見られました。親元を離れての自己管理の下での生活は、他人からの規制を受けることが少なくなり、生活上の自由度は大きくなります。この時期に習慣化した不適的な生活習慣を続けることは将来にわたって健康に大きなリスクをもたらします。将来の生活習慣病の予防のためにも身体活動を通した健康教育が必要であると思います。健康で行動力のある学生が育つことを祈念します(詳細は京都産業大学論集に掲載予定)。
 2017年、現代社会学部に現代社会学科と健康スポーツ社会学科が設置されました。学問領域が違う2学科がなぜ設置されたのか?現代社会学部のコンセプトは「地球上で生じている、またはこれから生じる問題を解決し、人々を幸せにする」ことです。我々が住んでいる地球には自然環境(太陽光・温度(気象)・重力・酸素・水など)が存在し、その環境に対して社会現象や社会的問題がおこっています。自然環境は「ヒト」にとってストレスであり、「ヒト」がどのようにストレス適応しながら生活しているかを認識し社会問題の解決に取り組むことは、より深化した問題解決に繋がっていくことになります。

卓球部の夏合宿(2019年)

 京都産業大学は開学以来、課外活動教育に力をいれてきました。トップアスリートは、小・中・高校と多くの年月をスポーツ活動に費やします。本学体育会所属の学生(特にスポーツ推薦入試合格者)も長年にわたって競技力向上に努めており、努力を継続する能力は備えています。スポーツ推薦入試の根幹は学問とスポーツの両立で、大学スポーツの在り方もまた、エビデンスにもとづいた練習や指導法など、教学の理念に沿ったシステムやカリキュラムを創造することで、社会に貢献できる人材を育成できると思います。今後の活躍を期待しています。