京都産業大学同窓会

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学部別

頼もしい卒業生の活躍

(※2020年9月発行の同窓会報の内容を転載しています)
三輪 卓己 教授
経営学部 人的資源管理論、組織行動論

 三輪ゼミは私の人望がないせいか不人気ゼミで、人数も多くない。それにもかかわらずなぜか意欲の高い素晴らしいゼミ生が入ってきてくれている。彼(彼女)らのおかげで、ゼミは私にとって充実感の得られる大切な仕事になっている。
 私はゼミ生の指導にあたって、背伸びした学習の経験と、試行錯誤の経験をさせることを重視している。前者は歯ごたえのある困難な学習課題に取り組み、それを乗り越える経験である。そして後者は自分で考え、創意工夫して何かを解決する経験である。これらは今後の社会で働くうえで必要とされる能力につながるものであり、現在の企業で苦労している人たちにはこうした経験が不足していると言える。
 背伸びや試行錯誤をするための機会として代表的なものが、3年生の時のグループ論文の作成と他大学との研究発表会、そして4年生の時の卒業研究である。前者は単なるイベントやお祭りにならないように、いわゆる名門大学や難関大学のゼミを相手にして、真剣勝負の討論を行っている。毎年グループ論文を作成するために企業調査を行って、理論的な分析をする。そこでゼミ生たちは企業の人たちとの交渉等の貴重な経験をしながら、自分たちで立てた問いに自分たちで答えを探していくのである。後者については、経営学部は卒業研究が卒業の必須要件ではないのだが、三輪ゼミはほぼ100%の人が4年生までゼミに在籍し、全員が論文形式の卒業研究を仕上げる。そのことを通じて、彼(彼女)らは自律的に高い目標に挑むようになるのである。

3年生の研究発表会

 さてゼミ生たちは、時折同窓会やその他の機会で帰ってきてくれるし、不意に便りをよこしてくれることもある。例えば初任給をもらった時に、私に贈り物をくれた卒業生がいた。彼は学生時代に文章を書くことが苦手で、勉強でも就職活動でも大変苦労した。私は彼を個別に指導したり、毎日メールをやり取りしてA4用紙1枚分の文章を添削したりもした。律義にもそれに感謝してくれたのだ。彼との日々のやり取りを思い出して本当に温かい気持ちになったものだ。また「会社で君の言語スキルはすごいって褒められたんです。ゼミのおかげです!」とメールを送ってくれた卒業生もいた。彼女は一見クールな今時のお洒落学生だった。私が文章作成能力を褒めたら嬉しそうにしていて、その後一層努力して驚くほど成長したのである。決してやる気を前面に出さない学生が、隠れて努力をしてくれることは、教員をやっていてよかったと心から思わせてくれる。また、私と同じ大学教員になった卒業生もいる。ゼミ活動を通して学問に興味を持ったらしく、大学院に進学したいと相談してくれた。あの時も本当に嬉しかったのを憶えている。彼がはじめて学会発表をした時、私が司会とコメンテーターをできたことは一生の思い出である。
 地味なゼミながら真剣に取り組んでくれた学生が活躍することが、私の教員としての喜びであり誇りである。彼(彼女)らが今後どのように成長してくれるのか楽しみである。