京都産業大学同窓会

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毎日がホームカミングデー

(※2019年9月発行の同窓会報の内容を転載しています)
箕輪 雅美 准教授
経営学部 経営戦略論

 この原稿の締め切り直前の6月25日、今年も2人のOB・OGがゼミに遊びに来てくれました。2008年卒業の山下欣美さんは1限の経営戦略論の講義にもゲストスピーカーとして登壇し、前半は美容脱毛業界におけるビジネスモデルの変遷についての解説を行い、後半はアンゾフのマトリックスやマーケティングミクスなどの経営学のフレームワークを駆使して構築した、自らの当該業界での起業プランを披露し、400人の受講生から拍手喝采を浴びていました。
 1限は山下さんのビデオ記録係という黒子に徹してくれた同期の松田輝治君は、2限、3限には彼女と共にゼミに参加し、現役のゼミ生のチームに入り、当日のテーマであったアメリカのバッグブランド「コーチ」のケース分析をリードしてくれました。この日のハイライトである全員でのディスカッションにおいては、2人の先輩が提供する社会人ならではの視点や論理の綻びに対する厳しい指摘が学生たちの思考を刺激し、今年一番の盛り上がりを見せたゼミとなりました。
 もし箕輪ゼミに誇れる点が1つあるとすれば、それは間違いなく卒業後に講義やゼミに帰って来てくれるOB・OGが多いことです。本年度も今回のようなOB・OGゲストスピーカーの登壇がもう2回予定されていますし、毎年のように授業へのアポなしサプライズ参加が何度かあります。
 もちろん豊かな自然に囲まれた神山のキャンパスは、 他大学にはない本学の重要な資産です。しかし残念ながら卒業後にはそれがOB・OGの足を大学から遠ざけてしまう原因となっているのもまた事実です。ですから大教室で1限の授業をやりながら、後方の席に交通の便の悪さをものともせずに来てくれた懐かしい顔を見つけたその時こそが、教員生活で最もうれしい瞬間なのかもしれません。授業が終わり、顔を合わせた時には開口一番「来るんなら一言言っておけよ。社会人になってそんなこともできないなんて、君を教えた先生の顔が見てみたい」と悪態をつきながらも、私の目じりはだらしなく下がっているはずです。

400人の現役学生の前で熱弁を振るう山下欣美さん

 箕輪ゼミでは、ゼミがある日は毎日がホームカミングデーです。講義へのアポなし参加も大歓迎です。厳密には許可なき受講はルール違反かもしれませんが、「花盗人は風流のうち」と言われるのと同様に、私は「OB・OGの授業参加も大学のうち」と考えています。昨今はコンプライアンスだなんだと些細なことにも目くじらを立てる世知辛い世の中になりましたが、この伝統だけは守っていきたいと考えています。
 とは言え、私も昨年還暦を迎え、教員としてみなさんをお待ちできる時間もあとわずかとなりました。ゼミから遠のいているOB・OGのみなさま、ぜひ近いうちに一度お帰りください。できれば神山祭などの特別な日にではなく、普通の開講日に。そこには懐かしさだけではなく、現役の学生と触れ合うことで生まれる新しい発見がきっとあるはずです。
 いつでもみなさまのお帰りを歓迎いたします。たとえそれが突然の訪問であっても。