京都産業大学同窓会

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星の世界を夢見て

(※2018年9月発行の同窓会報の内容を転載しています)
河北 秀世 教授
理学部 観測天文学

 2018年2月18日、私は大阪府堺市にあります「ソフィア・堺」(堺市教育文化センター)のプラネタリウムで、「彗星は太陽系のタイムカプセル」と題する講演を行ってきました。講演は私が長年の研究テーマとしています彗星(ほうきぼし)についての研究成果を紹介するものでした。この講演会は、本学理学部・物理科学科の卒業生からの依頼で実現したものです。

ソフィア・堺にて(右端がOさん)

 その卒業生(仮にOさんとします)が4年生の時にプラネタリウムに就職したいと言っているのを聞いた時には、「あれ、そうだったの ?」という感じで、普通にメーカー等へ就職するものと思っていた私はずいぶんとびっくりした記憶があります。その後、当時、本学神山天文台の主任研究員であった中道先生(以前にプラネタリウム勤務のご経験あり)に望遠鏡の操作や解説のコツなどを徹底的に訓練していただき、無事にソフィア・堺に就職が決まったのです。そのOさんが勤務を開始したのが2017年4月ということで、私が講演会をしたのは、まだ勤務開始1年になるかどうかという時期でした。この1年でどれくらい成長したのかと、楽しみにして現地を訪れたことを覚えています。

プラネタリウムでの星空解説に挑戦中

 さっそくプラネタリウムの控室にてOさんと再会し、いろいろと話を聞いている感じでは、学生時代のままです。Oさんのプラネタリウム解説は、私の講演会の後に聞く予定で、まだその時点では彼女のトークを聞いていませんでした。話し方など多少は社会人らしくなってはいても、プラネタリウムのように言葉で様々なことを伝えないといけない仕事がどれくらいこなせるのか、滑舌は大丈夫だろうか、とドキドキです。上司の方はOさんの活躍を大変ほめておられましたが、本当に大丈夫だろうか、と自分の講演よりも緊張しておりました。そうこうするうちに私の講演開始時刻がやってきたので、私は会場であるプラネタリウムに入り、スタッフの方から京都産業大学・理学部の河北先生です・・・というような紹介を受けました。さすがプロだな、聞き取りやすい発声と流れるような発話だと感心し、Oさんはどれくらいちゃんとできるようになっただろうか、と思っていたところ、良く見れば私の紹介をしてくれたスタッフは、まさにOさんではありませんか。え? このアナウンスはOさんなの? とずいぶんびっくりして、自分が話すことを一瞬、忘れそうになったくらいです。その後、講演会の後にOさんのプラネタリウム解説を聞きましたが、それは大変みごとなもので、正直なところ1年間でここまで成長しているとは全く予想していなかったのです。卒業生の活躍はいつも嬉しいものですが、自分の体験として目にした事ならば、なおさらでした。その後、本学理学部の在学生たちの中でプラネタリウムに就職を希望する学生さんに、ソフィア・堺でプラネタリウム解説業務の体験をさせていただく企画なども持ち上がり、2018年のゴールデンウィークに実現しています。卒業生との交流が、在学生にも広がりつつあります。
 私が京都産業大学・理学部に着任したのが2005年のことですから、既に10年以上が経過しました。その間に何人かの卒業生が科学館やプラネタリウム、公開天文台などに就職して活躍しています。科学館やプラネタリウム関係の研修会で、様々な施設のスタッフが一堂に会した際、あなたも京産大 ? みたいな会話が交わされることもあると聞きます。なかなか遠方の施設ですと、こうした卒業生たちの活躍を見る機会が持てないのですが、そろそろ夏休み期間などにでも、卒業生たちの活躍する施設をめぐってみようかと思っています。